つまみぐい

「アップルパイが出来たの」

焼きたてのアップルパイを両手に、ことみが歩み寄ってくる。
テーブルにパイを置くと「上手に焼けたの」と嬉しそうに呟いた。

「ああ、いい匂いだ」
「皆が来たら紅茶も淹れるの」
「ん、もう着いてもいいと思うんだが……」

壁の時計、アップルパイ、ことみの順に視線を移す。ことみと目が合った。
まあ、二人だけの時間ってのもなかなか無いし、悪くないんだが……と思いつつ嘯く。

「ったく、あいつらは何やってるんだ? 先に始めちまうぞ」

その言葉にふるふると首を横に振ることみ。
俺の言葉を大マジメに受け取っているらしい。

「皆で一緒に食べるの」

ちょっとした悪戯心がわいてくる。

「ふーん。なら、ちょっとだけ、味見するだけでも駄目か?」

そう言いながら伸ばした俺の腕をあわてて制止することみ。
俺の手を両手で包むように握ると、もういちど首を振る。
ことみの手の温かさを感じながら、俺は反対の腕でことみを引き寄せた。

「じゃあ代わりにことみを頂くとするか?」

「あっ、だ、駄目なの。もうすぐ杏ちゃん達が来るのに……んっ」

あいつらは俺達の為に時間をプレゼントしてくれてるんだろう。
適当に都合のいい事を考えながら俺はことみの口を塞ぐと――


「ほら、もうちょっとそっちに寄りなさいって」
「あの、これ以上は見つかってしまいます……」
「お姉ちゃん、覗きは良くないよ〜」
「いいのいいの。ホラ、静かにしないとホントに見つかるわよ……わっ、ちょっとアレ、うわ」
「あ……う……凄い、です……」
「……」

こっそりと庭に回って覗いている出歯亀三人娘。

どうやら10000HITしたらしいので、キリ番SS扱いしてしまおうか……