告白

「それで、話って何?」

放課後、椋に『大切な話がある』と呼び出された杏が問い掛けた。落ち着きなくもじもじとしていた涼は、杏に促されると顔を真っ赤にしながら告げる。

「あの、お姉ちゃん、私……で、で……みたい」
「何?よく聞こえないわよ」
「あぅ……その、できちゃったみたい」
「なっ!?」

衝撃の告白に言葉を失う杏。

「ちょ、ちょっと、どういうこと?産婦人科で診て貰ったの?何ヶ月?朋也の奴ちゃんと避妊しなかったの?」
「あ……う……その」

一瞬の茫然自失の後、もの凄い剣幕でまくしたてる杏にたちまち椋はしどろもどろになる。おまけに(涼にとっては)赤裸々な言葉に、顔は更に真っ赤に茹であがっていた。

「ったく、あの莫迦、信じられ……ない……?」

気付いたか。
自分が吐き出した言葉の意味を理解したのだろう、一瞬きょとんとした杏がまさかという表情に変わるのを見て、俺は立ち上がると茂みから歩み出た。

「朋也っ!」
「椋、上出来だぞ」
「朋也、あんたっ!!」
「俺は、椋が毎年騙されてばかりだって言うから協力しただけだっ」

何しろ椋は毎年騙されはしても、未だかつて一度たりとも騙す側に回ったことが無いと言うのだ。まぁ容易に想像はつくんだが。俺は反論しつつ杏の辞書攻撃に備えて身構えた。だが、杏は顔を伏せて立ち尽くしたまま動かない。

「あたしは、あんたたちの事を応援してるつもりよ……」
「赤ちゃんだって、そりゃいろいろ大変だけど、でも嬉しいと思ったのに……」
「お姉ちゃん……」
「杏……」

俯いて肩を振るわせる杏。まさかあの杏が泣いてるなんて……やりすぎたか。
謝っておくか。俺は杏に歩み寄ると、手を伸ばして肩を――掴まれた。
顔を上げる杏。そこにあるのは涙ではなく、邪悪な笑みだった。

「う、嘘泣き?卑怯なっ」
「今日はエイプリルフール、でしょ。ふふふ……」

俺の言葉を無慈悲に切って捨てる杏。彼女の手が俺の肩をギリギリと万力のように締め付けた。

「ひぃっ!?ね、義姉さん?ちょ、ちょっと、ほら、今日はエイプリルフールなんだから、ね、あでっ、や、やめっ―」
「あぁ、朋也くんっ!?」