溶解及び再凝固時における温度管理の重要性に関する一考察

細かく刻んだチョコを湯銭にかけながら溶かして。溶かして。溶かして……

「わっ、なんだか白っぽくなっちゃった!?」
何故か無残な有様になってしまったチョコを前に大騒ぎしていると、お姉ちゃんがキッチンに入って来る。テーブル上の惨状に一瞥をくれるとやれやれといいたげな表情で細長い棒状のものを突き出した。
「ちゃんとテンパリングしなきゃ上手くいかないわよ」
「温度計……?」
「お湯の温度は60〜70℃、40〜45℃でチョコを溶かして、そのあと26℃まで冷やしてもう一度30℃まで上げる。ちゃんと本読んだの?」
少しばかり鋭すぎる眼光と淀みの無い口調で数字を暗証するお姉ちゃんに圧倒されてしまう私。なんとか話を逸らせようとしてみた。
「え、えっとなんだか理科の実験みたいだね」
「白衣なら有るわよ?」
即答で返される。うう、それはちょっと……。
「それじゃ薬品を作ってるみたいになっちゃう……」
「そうね、まあある意味惚れ薬みたいなものよ。どっちかといえば呪術的なものだけど」
”惚れ薬”。祐一さんのハートをがっちり掴むための、手作りチョコ。お姉ちゃんの言葉に思わず顔が赤くなっていくのを感じる。お姉ちゃんはそんな私ににっこりと微笑むと髪を束ねてエプロンを取った。
「ほら、今日中に試作品を完成させるつもりなんでしょ?」
「うん……うんっ!」

そして強力な援軍を得た私は、眼前の強敵に対して再び戦いを挑むのだった。

なんとなく、香里が調理とかするときの脳内絵は何故か白衣。ノリは化学実験。
つまり髪は後ろに束ねて制服の上に白衣で眼鏡な香里萌え。