美坂姉妹

ペアカップ

「意外ね、相沢君がプレゼントなんて」 「まあ、安物だけどな」 「莫迦ね、こういうのは値段の問題じゃないのよ」 満更でも無い表情を浮かべてで誕生日のプレゼントを受け取った香里は、開けていいの?と視線で問い掛けた。頷き返す祐一を見て、包装を解く。…

Thermal Equilibrium

「おじゃましまーす」 「……ただいま」 「おかえりなさい、お姉ちゃん。いらっしゃい、祐一さん」 夏期講習の帰り、並んで美坂家の玄関を潜った俺達を迎えたのはリビングから流れてくるクーラーの冷気と、アイスを咥えた栞だった。 「おお、随分と贅沢な夏休…

栞と眼鏡とヘッドホン

「ただいま……あら、相沢君」 「よ、お邪魔してるぞ」 美坂家へ帰宅した香里をリビングで迎えたのは、祐一の声であった。 彼は香里に振り向きもせずに手をひらひらさせている。その視線の先には……栞が寝転がって本を読んでいた。 「なにやってるのよ、あんた…

溶解及び再凝固時における温度管理の重要性に関する一考察

細かく刻んだチョコを湯銭にかけながら溶かして。溶かして。溶かして…… 「わっ、なんだか白っぽくなっちゃった!?」 何故か無残な有様になってしまったチョコを前に大騒ぎしていると、お姉ちゃんがキッチンに入って来る。テーブル上の惨状に一瞥をくれると…