長門有希の口中


「手を」

長門に言われるがままに手を差し出しながら、俺は長門による手首への噛み付き攻撃を思い出していた。暴走した長門による時間改変から身を守るために、得体の知れないナノマシンを注入するための対抗措置。あまり思い出したくはなかったが。

「あのさ」

「なに」

なんというか、手首のアレはむず痒いというか、なんだ。もう少しなんとかならないか?
いや、痛いっていう訳じゃないんだが。

「……わかった」

長門は微かに頷いて見せると、両手で俺の手をとって口元に引き寄せた。拳を包み込む柔らかい手の感触にハッとなってしまう俺を余所に、長門は相変わらずの無表情のまま細い指を握りこんでいた俺の人差し指に絡めてそっと伸ばした。おい、まさか

「んっ」

そのまさか、長門が俺の指を咥える。歯を立てる感触に指が反射的に動いたかと思う刹那指の先端が濡れ――長門の舌に触れたのだと理解する間もなく――指先を舐め上げられた。思わぬ反射の連鎖に腰が引けそうになり、身じろぎする俺の手を離すまいと長門の手にわずかに力が入った拍子に再び舌が蠢き、その艶かしさに俺の心臓はレッドゾーンへと急上昇を開始する。

「……」

動揺しまくっている俺を上目遣いで見つめる長門。おそらく長門は処置が終了するまで動くなとアイコンタクトしてるつもりなのだろう。しかしよりによってこんなシチュエーションでそんな目で見つめないでくれ。思わずどうにかなりそうだ。

5秒……10秒……

とりあえず心の平静を取り戻すべく天を仰いで目を閉じた俺は処置が終了するまで時間を数え……随分長くないか、おい?

ピクリと指が動くたびに微かに声を発して舌を蠢かす長門に、俺は全身を硬直させてひたすら終了時間を待ち続けるのだった。

某スレにカキコしたレスを元に。
どこでどうしてフィールド形成しなきゃいけなくなったかとかそういうのは気にしない方向で。